Q&A
2021年9月27日(月曜日)
配置転換は自由に行ってよいのか?
日本の労働法では、解雇に関しては非常に厳しく規制されています。欧米では、会社は従業員の能力に対して賃金を支払っているという認識が強いようで、比較的容易に解雇されるケースが多いようです。対して日本では、能力というよりは、その人の人生の一部を購入したと言ってはいいすぎかもしれませんが、労働力を買い取ったのであって、能力が不足しているのであれば会社が教育を行い、必要な人材に育てるべきという意識が強いようです。また、試用期間に特に期間は定められていませんが、採用後2週間を超えると解雇予告手当を支払う義務が生じるため、実質的には2週間でその人の能力を見極めなければならないという考え方もできます。欧米では、ひとまず働いてみてもらって、能力が不足しているようであれば解雇するということが可能ですが、日本では採用時に、可能な限りその人の能力を図る必要があります。
ですので、採用時に履歴書や職務経歴書を提出してもらったり、2回も3回も面接を行うのは、こういった事情を踏まえると必要なのかもしれません。
会社としては、可能な限りその人の雇用を維持するため、教育を行ったものの、どうしても事業所において必要な人材になり得ない場合、配置転換を行うことがあります。使用者には配置転換を命令する権限がありますので、労働者は正当な理由なくこれを拒否することはできません。ただし、雇用契約書に、人事異動は行わない旨の記載がある場合や、就業規則に定めのない場合は、本人の同意が必要になるケースもあります。また業務上の必要性が認められない場合や、労働者の不利益の程度によっては権利の乱用として認定されてしまうこともあります。ただ、それでも解雇よりはハードルは低いと言えます。
お互いに納得したうえで雇用を維持することができるよう、採用時の十分な説明と、その後の教育体制は重要だと言えます。